南武線の車掌はときおり透明になる・・・

背の高い車掌の素晴らしい背中の曲面を体感しそこで遊び戯れるビーダマがある。

ああ、JR東日本のジャケットのデザインは 

世界遺産のレリーフのよう

夕映えにあざやかに 輝く・・・

 そんなことを思いつつ 最後尾のガラス 銀の手すりを両手で握り かすかに眠っているわたし・・・目を閉じるとき車掌の背中があって うすらぐ意識のなかでその夏服のグレイのかけらを握り締め 安心して沈み それから深い眠りからさめても またそこに車掌がいるということ その安心感があるから わたしは電車に乗れるのですよ・・・やくそくをまもって あんぜんをまもって・・・・ああ 渡り鳥は東京の震災を心配するのだろうか カラスは予感の深みにおそろしくなることが あるのだろうか わたしはすべてがこわい すべてが声をあげて 怖い だから 車掌に抱かれてこそ 電車に乗ろうというものだ・・・・

 「えー 似てないよ。目がくぼみすぎ」

  「でも、ちょっと似てなくない~~?」

そんな声で 目を覚ました 

手すりにもたれて寝ているわたしの後ろにいた 派手な若い女性2人組が 高い声で 笑っている・・・

  「あ、でも 横顔になると ちょっとヨウジに 似てるかも・・・」

そう、彼女たちは、その背の高い車掌を見て それが彼女の知り合いのヨウジに似ているかどうか、という話をしていたのだ

夕映えの逆光に輝く 車掌の美しい うなじ・・・

それが美しいということ・・・・

 「車掌さんとかってさ 背の高い人が多いよね・・・・

       この人も、そうじゃん・・・・・」

わたしでない女性が、その車掌に気づく。

長身の車掌のまっすぐな鼻、ホコリを寄せ付けぬ磁場をもつ

すらりとした背中

なにより こなれた動き

その キンとした存在に

気づいた・・・・

いやだわ、わたしだけの視線に隠しておきたかった 

のに

車掌のフィギュア 誰かの視線でかすかに塗られて

汚れそうな

予感・・・

 「車掌さんってさ、みんな帽子してるじゃん、あれって脱げちゃったりしないのかなあ」

 「そうだよね、雨の日にも、ビニールをかけてまで帽子をかぶるじゃん。なんでそんなにまでして!って思うよね」

 

 「あの帽子、どうなってるんだろうね・・・」

女性2名はいまや その車掌に 夢中。

そうこうしている間にも、駅に停車し、車掌は通常の業務をこなす。

なれた手つきの、美しいしぐさ。

車掌は美しいな・・・

と、その2人組が気づいたかどうかは判りませんが

それからすぐにその女性たちは

降りてゆきました。

夕映えと一緒に家路につく ひとびと。

significantな他者のもとへと。

そして

あとに残されたのは車掌の背中と、わたしだけ。

カラスが西へと向かって行く、カアカア。

駅ははやくも高架線。

・・・ああ、やっぱり いまだに綺麗だ わ・・・。

車掌はひとつも汚れることなく そこに立っていた

かすかに気配を消しながら

ただわたしのためだけに 

そこにいた